【第33回】固定資産税の減税対策まとめ

節約・投資

日本の「固定資産税(都市計画税を含む場合あり)」について、一般的に用いられている“減税”または“負担軽減”の代表的な方法・制度を整理したものです。内容は 2024 年5月の法令・通達等を基にしていますが、市区町村ごとに運用や必要書類が異なるほか、今後改正される可能性もあります。実際に手続きを行う際は、必ず管轄の市区町村税務課や税理士・司法書士等の専門家へ確認してください。

対応一覧

固定資産税の負担を抑える王道は、
(1) 評価の誤り是正                                    (2) 住宅用地等の法定特例をフル活用
(3) 新築・改修の減額制度をタイムリーに申請
(4) 事業用資産は自治体の条例減免・経営強化法の特例を使う
(5) 利用形態を見直し「住宅」「農地」等の区分を最適化

という5本柱です。自治体によって提出期限や書類が細かく異なるため、工事や登記の前段階から市区町村税務課・専門家に早めに相談し、申請漏れを防ぐことが最も確実で大きな“減税対策”になります。

評価額そのものを下げる・誤りを正す


①評価替えの確認・縦覧・審査請求
毎年1月1日時点の「固定資産課税台帳」の評価額で課税されます。
3年ごとに“評価替えがあり、その年の4~5月頃に「縦覧期間」が設けられます。
・近隣の類似物件より極端に高い/面積・地目・家屋構造が誤っている等の場合は「審査の申出」(納税者は4月1日〜納税通知書の交付後3か月以内)を行うことで、評価額が下がれば翌年度以降の税額も減少します。

②地目・利用状況の見直し
・実際は農地や雑種地なのに宅地として評価されている etc.

・現況と評価が食い違う場合は、地目変更登記・現況変更届を行うことで評価額が下がる余地があります。

「住宅用地」「小規模住宅用地」の特例を活用

1.小規模住宅用地(200㎡以下)

課税標準=評価額×1/6

2.一般住宅用地(200㎡超~1,000㎡以下)

課税標準=評価額×1/3

・住宅が建っている(1月1日時点で居住用家屋がある)ことが条件。
・戸建だけでなくアパート・賃貸マンションでも適用。
・家屋を取り壊して更地にすると翌年から“宅地扱い”が外れ、税負担が急増するので要注意。

新築住宅・賃貸住宅の「減額措置」


①新築住宅(自宅)
・床面積 50~280㎡の範囲

→120㎡部分まで家屋分の固定資産税が1/2

・適用期間:戸建て・低層住宅=3年度5年度分、耐火3階建以上=5年度7年度分。

詳細はこちらをご確認ください⇒国土交通省 HP 新築住宅に係る税額の減額措置

②賃貸住宅(アパート・マンション)
・同上(1戸あたり 40~280㎡、全体で住宅部分が1/2)。

③バリアフリー・省エネ・耐震改修の減額
・一定の要件を満たす工事を行うと、家屋部分が1/3~1/2 減額(3年度分等)。
・バリアフリー(高齢者等居住住宅改修)、省エネ(断熱・窓改修等)、耐震改修。
・工事完了後3か月以内に申告が必要。

事業用資産向けの特例・優遇


①中小企業経営強化法による「固定資産税ゼロ~1/2」
・認定を受けた先端設備等(機械装置・工具器具備品・建物附属設備・構築物)に対し、3年間 0~1/2。
・市区町村の条例で実際の軽減率が決まる(ゼロ税率の自治体も多い)。

②企業立地促進条例/産業団地誘致策
・製造業・IT 業等が指定区域に工場・研究所を建てた場合、数年間免除または減額。
・自治体独自施策のため、要件・期間は個別確認。

③農地等(生産緑地を含む)の特例
・生産緑地指定を受ければ、農地課税(宅地比で評価額が1/200 など)+相続税納税猶予も。

評価額は下げられないが税額を減らせる「非課税・免税・減免」


①免税点未満(土地30万円/家屋20万円/償却資産150万円)
・各資産単位で課税標準が上記未満なら固定資産税は課税されません。
・ただし複数筆の土地は合算するので注意。

②公益性による非課税
・宗教法人の境内地、社会福祉法人の福祉施設、学校法人の校舎・園舎等は非課税。

③災害・著しい損耗による減免
・火災・震災・水害で家屋が損壊した場合、申請により一定期間減免。

物理的・法的な活用見直し


①老朽空き家の解体 or 賃貸化
更地にすると住宅用地特例が外れ税額が6倍に跳ね上がる一方、
・管理不全空き家に指定されれば「住宅用地特例の解除+特別課税」リスク。
→賃貸住宅として再生 or 利活用する方が結果的に負担が下がるケースも。

②駐車場・資材置場の取り扱い
・住宅が無い月極駐車場や資材置場は「雑種地」評価で住宅用地特例なし→税額増。
・一部を居住用(管理人住宅)にする等で特例対象面積を確保できる場合も。

③農地転用・宅地化のタイミング調整
・宅地化すれば評価額一気に高騰。
・事業計画と課税時点(1/1)を意識し、造成完了を翌年度にずらす等で1年分節税する例も。

 手続きの流れとチェックリスト

  1. 納税通知書と課税明細書を入手
  2. 評価額・地目・家屋構造が妥当か確認(縦覧期間を活用)
  3. 誤りがあれば、市町村へ「審査の申出」や地目変更届
  4. 住宅用地特例・新築減額・改修減額などの届出期限を確認
  5. 事業設備・企業立地・改修工事は、着工前に認定・申請が必要なケー��が多いので注意
  6. 専門家(税理士・土地家屋調査士・建築士等)に相談し、費用対効果を試算

 よくある誤解・注意点


・固定資産税は「時効取得」や「相続放棄」で簡単に免れることはできない(納税義務者は毎年1月1日時点の所有者)。
・土地を共有化しても税負担は物理的に変わらない。相続税対策と混同しない。
・違法建築・用途違反は減税どころか追徴や是正命令のリスク。
・節税目的のみで農地転用や生産緑地指定を受けるのは困難。実態に即した運用が求められる。

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